• ファスティング基礎知識
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メンタルヘルス改善にファスティングが効果的?ファスティングに秘められた可能性とは

現代社会において、ストレスや不安、うつ症状などのメンタルヘルスの問題が増加しています。精神的な健康を保つためには、適切な生活習慣やケアが必要ですが、最近ではファスティングがメンタルヘルスに良い影響を与えることが注目されています。

この記事では、ファスティングが精神的な安定をどのようにサポートするのかを詳しく紹介します。


この記事の監修ドクター

名前 伊藤 有毅(いとう ゆうき)

東北大学医学部医学科を卒業後、東京大学医学部精神神経科、都立松沢病院を経て 2018年から柏メンタルクリニックで勤務。日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医の資格を持つ。


メンタルヘルスの現状

厚生労働省が2024年8月に発表した厚生労働白書によると、心身の健康に対する最大リスクで最も多くなったのは「生活習慣病を引き起こす生活習慣」で36.4%でしたが、過去20年間で20ポイント近く下がっています。

その一方で増加の一途を辿っているのが、2番目に多くなった「精神病を引き起こすようなストレス」です。2004年には5.0%でしたが、2024年では15.6%と過去20年間で3倍に増えたことが明らかになりました。

現在のこころの健康状態については、19.3%が「よくない」「あまりよくない」と回答したということです。世代別に見ると30歳代が27.2%、40歳代が27.3%と他の世代よりも高く、働き盛りの世代がこころの健康状態がよくないことも浮き彫りになりました。

主な不安感の原因で最も多かった回答は、30歳代では「仕事上の人間関係」が38.8%、40歳代では「経済的な問題」が38.7%でした。

現代社会は「ストレス社会」とよく言われますが、年々ストレスによる影響は大きくなっていることが分かりますね。

ファスティングによるメンタルヘルス改善

ファスティングを行うことでメンタルヘルスが改善される可能性が注目されていますが、どのような理由でこころの健康に効果があるのでしょうか?この項目では、ファスティングとメンタルヘルス改善の関係性について説明していきます。

ファスティングがメンタルヘルス改善に効果的な理由

 ・ホルモンバランスの改善

ファスティングは体内のホルモンバランスに大きな影響を与え、これがメンタルヘルスに改善をもたらす要因のひとつです。

(1) インスリン感受性の向上

ファスティングによってインスリン感受性が向上し、血糖値が安定することで、気分の浮き沈みやイライラを軽減できます。急激な血糖値の上昇と下降が気分に悪影響を与えることがあり、これを安定させることはストレスや不安の軽減につながります。

(2) コルチゾールの調整

コルチゾールはストレスホルモンとして知られ、過剰な分泌が不安感やイライラを引き起こします。ファスティングはコルチゾールの分泌を適切に調整し、長期的なストレス耐性を高めることができます。定期的なファスティングは、ストレスへの反応を適切に保つため、精神的な安定を促進します。

(3) セロトニンとドーパミンの調整

セロトニンやドーパミンといった「幸福ホルモン」の分泌は、メンタルヘルスに直接的な影響を与えます。ファスティングによって脳の神経伝達物質のバランスが調整されることで、気分が安定し、ストレスや不安を軽減できる可能性があります。

・自律神経のバランス調整

ファスティングは自律神経にも良い影響を与え、心身のリラクゼーションを助けます。

(1) 交感神経と副交感神経のバランス改善

過度のストレスや過労によって交感神経が優位になり、体が緊張状態に陥ります。ファスティングは副交感神経を優位にし、リラックスした状態を促進します。これにより、ストレスホルモンの分泌が抑えられ、心地よい精神状態が保たれます。

(2) 心拍数と血圧の低下

ファスティングを行うことで、心拍数や血圧が低下し、リラックス状態が維持されます。これが精神的なストレスを軽減し、心の健康を保つための基盤となります。

心理的なリセット

ファスティングは単に体の健康に寄与するだけでなく、心理的なリセットも助けます。食事を控えることで、食べ物への依存を減らし、精神的に自分と向き合わせる時間が増えます。これにより、ストレスや不安の源に気づくことができ、感情の整理ができるようになります。

睡眠の改善

良質な睡眠はメンタルヘルスに不可欠です。ファスティングを行うことで、睡眠の質が改善される可能性が注目されています。質の高い睡眠がとれることで、精神的な疲労回復が促進され、ストレスや不安が軽減されます。

(参考記事:)[1] 

ファスティングとストレスの影響を示した論文

フランスのエクス=マルセイユ大学の研究グループは、ファスティングがストレス、不安、抑うつに与える有効性を調査しました。研究グループが合計11の研究と1,436名を対象に調査した結果、断食したグループはそうでないグループと比べて不安、抑うつ症状が有意に低くなったそうです。また、疲労の増加は認められませんでした。

おすすめのファスティング実践方法と心理的効果

メンタルヘルスを改善するためにファスティングを取り入れる場合、まずは16時間ファスティングからスタートしてはいかがでしょうか?(参考:「16時間断食とは?メリット・デメリットややり方を詳しく解説」

軽いファスティングを週に数回行うことで、精神的な安定を図ることができます。

また、ファスティング中には自分と向き合う時間が増えるため、心のケアを行うための良い機会ともなります。

ファスティングを実践する際の注意点

メンタルヘルス改善のためにファスティングを取り入れる場合、過度なファスティングは危険です。状況によってはメンタルの状態を悪化しうることがあるので医師と相談しながら行うといいでしょう。[2] 

まとめ

ファスティングは、ホルモンバランスを整え、ストレスを軽減し、心の健康を守る手段として有効です。その結果、メンタルヘルスに多くの利点をもたらすことが期待されています。

ファスティングを日々の生活に取り入れることで、精神的な安定を得てみてはいかがでしょうか?

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