ファスティング中の食事は何を食べたらいい?

ファスティングをするときは、前後に準備期と回復期を設ける必要があります。期間中に適切な食事を取ることで、ファスティングにスムーズに入りやすく、成功率も高まります。この記事では、ファスティング期間中の食事の取り方のポイントについて解説しています。

食事を制限している間にとれる食事についても説明しているので、参考にしてみてください。


この記事の監修ドクター

名前 中路 幸之助 
所属 医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター

経歴 1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。


ファスティング=断食なのか

ファスティングは、英語で断食という意味をもつ言葉ですが、ライフスタイルとしてのファスティングは、断食と異なる意味合いで使われるケースも増えています。ここでは、ファスティングと断食の意味や両者の違いについて説明します。

ファスティングと断食の違い

ファスティングとは、一定の期間食事を取らないことで断食も同じ意味を持ちます。

もともと断食は、宗教の修行や試練のために、飲食を断つことをいいます。例えばイスラム教では、イスラム歴の第9月に断食(ラマダン)を行います。ラマダン中の食事は、日没から日の出までとされており、日が出ている間は水分補給のみ行います。

一方、キリスト教では神への祈りを捧げるために、一定期間飲食を断つ人もいます。断食は、特定の宗教による信仰のために、信者が食事や水分を断つ行為を意味します。

しかし近年、宗教的な断食との違いをはっきりさせるために、独自の意味で「ファスティング」という言葉が使われることが多くなっています。断食が厳しいイメージを与えるのに対して、ファスティングはよりマイルドで手軽な印象を持つ人が多いようです。

狭義のファスティングは、美容や健康を目的としており、流派ややり方によって摂取できる飲食の内容も異なります。

ファスティング前後の食生活注意点

ファスティングは、朝食ファスティング・16時間ファスティングなどさまざまなやり方があります。ここでは最もオーソドックなファスティングである、3日ファスティングの方法について説明します。

準備期

ファスティングをする場合、食事を取らない期間と同じ日数分の準備期間と回復期間が必要です。3日ファスティングを行う場合は、3日間の固形物の摂取を避けるため、準備期から体を慣らしていく必要があります。準備期間中の食事内容例は次のとおりです。

1日目:水分摂取を十分に行い、栄養バランスの良い食事をとる

2日目:食事の量を少し減らし、消化の良い食事をとる(スープ、野菜や果物など)

3日目:固形物の摂取を少なくし、翌日のファスティングに備える(おかゆなど)

準備期は、スムーズにファスティング期に移行するための期間です。なるべく胃腸の負担がかからない食品を選び、ファスティングに備えましょう。

ファスティング期

ファスティング期では、食事を取らずに水分摂取のみを行います。食材には水分も含まれており、水分摂取の45%は食事からによるものです。そのため、ファスティング中は意識的に水分を補給しないと、体の脱水を引き起こすリスクがあります。

ファスティング期の水分摂取のポイントは次のとおりです。

1日目:水分補給をしっかり行いましょう。まだまだ体力を保ちやすいので、ノンカロリーの飲み物を中心に摂取します(水など)

2日目:エネルギー不足により体力の低下やイライラを感じる時期です。ハーブティーなどで気持ちを落ち着けましょう。

3日目:体のエネルギーが枯渇して、疲れを感じやすい時期です。酵素ドリンクでビタミンやミネラルを補給して、ファスティング最終日を乗り越えましょう。

ファスティングは健康的に体質改善を目指すものです。期間中に体の不調を感じた場合は、無理して続ける必要はありませんので、早めに切り上げるようにしましょう。

回復期

回復期は元の食生活に戻るためのならし期間です。ファスティング後は胃腸がゆっくり機能し始めるため、急に食事を戻すと健康を害する可能性があります。回復期の食事例は次のとおりです。

1日目:どろどろした具なしの食事を取ります(重湯や具なしみそ汁、スムージーなど)

2日目:少しずつ固形物の混ざった食事を取りましょう(おかゆ、柔らかく似た野菜など)

3日目:野菜とタンパク質を取り入れた健康的な食事を取る(柔らかく炊いたごはんと具入りみそ汁、野菜と肉入りリゾットなど)

回復期は自分が食べたいだけ食べるのではなく、ゆっくりと通常の食事に戻していきます。胃腸の消化を助けるため、よく噛んで時間をかけて食べるようにしましょう。

ファスティング中にお腹が空いたらどうする?

ファスティングに対して最も苦痛を感じやすいのが空腹感です。食べることは、生きるエネルギーを得る行為であるため、空腹は心身に強いストレスを感じます。

ファスティングによりどうしてもお腹がすいてしまう場合は、少量の食べ物を口にするのもよいでしょう。ファスティング期間中は固形物を食べないことが基本です。しかし、何か食べたからといって、ファスティングの効果が一切なくなるわけではありません。

ここではファスティング中に飲食できるものについてみていきます。

食べていいもの

ファスティング中に食べるのが我慢できないときは、栄養価の高い食品を少量食べましょう。具体的な食品は以下です。

  • 果物
  • チーズ
  • ナッツ
  • ヨーグルト
  • ブラックチョコレート
  • 梅干し

お腹がすいていると、1口2口ではやめられず、過食に走ってしまうことがあります。このような場合は、少なめのサラダや春雨スープなど、食べ応えのあるヘルシーな食事をとるのもよいかもしれません。

飲んでいいもの

ファスティング期間中は食事を摂取しない分、質の高い水分補給が必要です。ファスティング中に適切な飲み物は以下です。

ファスティング中の水分摂取でおすすめなのが水です。水は糖分やカロリーがなく、余分な成分が含まれていません。天然水を選べば、ミネラルを一緒に取ることができます。

水だけでは物足りない人は、炭酸水などを選ぶのもよいでしょう。炭酸ガスにより満腹感を得られます。また、炭酸ガスには便を柔らかくする作用もあるので、便秘改善にも役立ちます。

お茶(ノンカフェイン)

ファスティング中は、ノンカフェインの飲み物を選びましょう。カフェイン飲料は体内の水分を尿として排泄させる作用があり、水分補給にはなりません。コーヒーやお茶などカフェイン飲料を飲みすぎると、体の脱水を引き起こすリスクがあります。

また、カフェインは胃の粘膜のバリア機能を低下させる作用があります。とくに、ファスティングにより十分な食事を取っていないと、胃の粘膜が胃酸にさらされやすくなります。カフェイン入りの飲み物により、胃が荒れやすくなるので注意が必要です。

ノンカフェイン飲料にはハーブティーがあります。ハーブティーには、気持ちをほっとさせる効果があるので、落ち着いた気持ちで過ごせるでしょう。

酵素ドリンク(ビタミン・ミネラル補給)

ファスティング中は酵素ドリンクを飲むのもおすすめです。酵素ドリンクとは、微生物の作用により果物や野菜を発酵させた飲み物のことです。酵素というと消化酵素を思い浮かべる人も多いですが、酵素自体はタンパク質であるため、飲んでも胃の中で分解されてしまいます。そのため、酵素ドリンクを飲んでも酵素の効果を得ることはできません。

一方で、多くの酵素ドリンクにはビタミンやミネラルを豊富に含まれています。そのため、ファスティング中の栄養補給や健康・美容のサポートに役立ちます。

まとめ

ファスティングは、準備期・ファスティング期・回復期に分かれており、それぞれ適切な方法で飲食する必要があります。準備期では少しずつ食事の内容を軽くすることで、ファスティングに移行しやすくなり、回復期には食事をゆっくり戻すことで、胃腸のトラブルを避けられます。

ファスティング期は、食事からの水分補給や栄養摂取が不十分になるため、酵素ドリンクなど質のよい飲み物を選ぶようにしましょう。ファスティング中に空腹感が辛くなる場合には、栄養価の高い食品を少量摂取することもできます。記事内で紹介した内容を参考にして、ぜひファスティングを成功させてください。

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