ファスティングで深い眠りを得る可能性!睡眠改善のための新しい習慣

現代社会では、忙しい日々の中で睡眠不足に悩まされている人が多いことが問題視されています。睡眠の質が低下すると、疲れが取れない、集中力が欠ける、免疫力が低下するなど、心と体の健康に深刻な影響を及ぼします。
こうした中、ファスティングを生活に取り入れることで、睡眠改善に効果がある可能性が示されていることをご存知でしょうか?ダイエットやデトックスに用いられることが多いファスティングですが、近年ではファスティングが睡眠の質を向上させた結果を紹介する論文も登場しています。
この記事では、ファスティングが睡眠に与える影響やその理由、実際にどのように実践すれば良いかについて詳しく解説します。
この記事の監修ドクター

名前 中路 幸之助
所属 医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター
経歴 1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。
睡眠と健康の深い関係
睡眠不足の健康リスク
睡眠は、私たちの健康に欠かせない要素であり、身体と脳の回復を助ける重要な役割を果たしています。質の良い睡眠は、免疫機能の回復やホルモンバランスの調整、脳の情報整理と記憶の定着など、心身にとって非常に重要な役割を担っています。また、睡眠不足や質の低下は、生活習慣病やメンタルヘルスの問題を引き起こす原因にもなります。
睡眠が不足すると、日中に眠くなったり、疲労感が出てしまいます。それだけではなく、肥満や高血圧、2型糖尿病、心疾患や脳血管障害の発症リスクの上昇や症状の悪化に関連し、死亡率の上昇にも関与することが明らかになっています。
また、睡眠に問題が起きることでうつ病などの精神障害の発症リスクを高めるという報告もあります。そのため、睡眠の質と量を確保することが、心身の健康を維持するために重要です。
日本人の睡眠事情
厚生労働省がまとめた「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人・こども・高齢者の各ライフステージごとに、睡眠に関する推奨事項をまとめるとともに、質・量ともに十分な睡眠を確保するに当たっての参考情報をテーマごとにまとめています。

成人に推奨される睡眠時間は6時間以上とされていますが、この時間を確保できていない人は少なくありません。
2023年に実施された国民健康・栄養調査の結果、日本人の41.2%(男性 38.4%、女性 43.6%)が、1日あたりの睡眠時間が6時間未満であることがわかっています。5年前の2018年の調査では、1日あたりの睡眠時間が6時間未満の割合は37.9%(男性 36.1%、女性 39.6%)でしたので、睡眠時間は悪化の一途を辿っていることがわかります。

また、2021年のOECD = 経済協力開発機構の調査報告でも、日本人の平均睡眠時間は調査対象 33 カ国の中で最も短かったことが明らかになっています。
ファスティングが睡眠にプラスになると考えられるポイント
ファスティングは、一定時間食事を摂らないことにより、体内のエネルギーバランスをリセットします。ファスティングを実践することで、睡眠に良い影響を与えることができると考えられるのは、以下のポイントです。
体内時計の調整
ファスティングは、体内時計を整える効果があります。食事の時間と睡眠の時間が密接に関係しており、食事を摂るタイミングが体内時計を乱す原因となることがあります。ファスティングを行うことで、食事と睡眠のタイミングを一定に保つことができ、体内時計がリセットされ、睡眠の質が向上することが期待されます。
成長ホルモンの分泌促進
ファスティングによって成長ホルモン(GH)の分泌が促進されることがわかっています。成長ホルモンは、細胞の修復や再生を助け、深い眠りをサポートします。ファスティングによって成長ホルモンの分泌が増えることで、睡眠中の身体の修復が効率的に行われ、深い睡眠が得られる可能性が高まります。
メラトニン分泌への影響
メラトニンは、睡眠を促進するホルモンであり、夜間に分泌されることで、私たちを眠りへと導きます。このメラトニンの分泌は、光と暗闇のサイクルに大きく影響されますが、食事のタイミングも影響を与えることがわかっています。
ファスティングを行うことで、夜遅くに食事を摂ることがなくなり、メラトニンの分泌を妨げることがなくなります。食事が消化される過程で、体温が上昇し、睡眠の質に影響を与えることがありますが、ファスティングをすることでこの影響を避けることができます。その結果、メラトニンの分泌がスムーズになり、質の良い睡眠が得られやすくなります。
ファスティングが睡眠にプラスになる結論付けられた研究報告

ファスティングが睡眠にプラスになると結論が導かれた研究報告は、イギリスのKing’s Colledge Londonの研究チームによって行われました。研究結果は、2023年の欧州栄養会議で発表されました。
研究チームは、「ZOE Health」というヘルスケアアプリのユーザーに、最初の週にはそれまでどおりに食事をしてもらい、2週目からは食事ができる時間を10時間に制限する実験を行いました。実験対象者は3万7545人で、このうち2万7371人のユーザーが「高い関与度」と分類されました。高い関与度を示した参加者は78%が女性で、平均年齢は60歳、BMIは25.6でした。
実験の結果、14時間ファスティングによって、多くの人が睡眠の質の改善、気分の改善などを実感しており、健康状態が大幅に改善されたとみられたということです。
睡眠改善に相性がいいとみられるファスティング方法
16時間ファスティングを実践しよう
ファスティングの方法にもいくつかの選択肢がありますが、睡眠改善を目的とする場合、無理なく実践できる方法が重要です。その観点から見ると、16時間ファスティングは実施のハードルが最も低く、睡眠改善との相性がいいと考えられます。
16時間ファスティングは、食事の時間を8時間に制限して、それ以外の16時間は断食を行うという方法です。例えば、夜8時までに食事を終えた場合は、翌日の正午まで食事をしないことになります。
睡眠改善を目的とする場合、食べ物の摂取から2〜3時間は時間を開け、食事後の消化活動が終わった状態で眠ることが大切です。
16時間ファスティングについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
睡眠改善目的のファスティングに関する注意点
ファスティングを実践することで、基本的には睡眠に良い影響を与えることが期待されますが、無理に行ったり、体調に合わない方法を選ぶと、逆に睡眠の質が悪化することもあります。無理なくファスティングを行うことが大切です。
まとめ
今回の記事では、ファスティングが睡眠の質を向上させるための1つの方法として期待できることを紹介しました。
睡眠の質を改善したいと考えている方は、無理のない範囲でファスティングを取り入れることを検討してみてはいかがでしょうか?自分に合った方法を見つけ、日々の生活に取り入れることで、質の良い睡眠を手に入れることができるでしょう。

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