胃腸への負担が懸念される食品
胃腸への負担が懸念される食品といえば、どんな食品を頭に思い浮かべますか?
ファストフード、肉類、インスタントラーメンなどの加工食品、炭酸飲料、スナック菓子など、思い浮かべればどんどん出てきます。
今回ご紹介する胃腸への負担が懸念される食品は、牛乳やヨーグルト、日本茶といった日本ではこれまで体に良い食品として取り扱われてきたものです。
日々の食生活を見つめなおすきっかけとして、ご活用ください。
乳製品
牛乳といえば、カルシウム補給食品として成長期の子供たち、あるいは骨の弱い高齢者たちに不可欠な食品といわれています。
しかし、大人になると、一部の人は乳糖を分解する酵素が少なくなったり、酵素の働きが低下してしまうため、分解されなかった乳糖が大腸に届き、ガスと酸を発生させて腸を刺激、下痢症状を起こしてしまうことがあります。
牛乳を飲むとお腹を壊してしまう人は、アレルギーか乳糖不耐症かもしれないため、自身の体に合わないと思ったら摂取を控えてみてください。
ヨーグルト
現在、いろいろな種類のヨーグルトが販売されています。
乳酸菌を生きたまま腸に届くという製品もあれば、1種類だけではなく数種類の菌を混ぜ合わせた製品など、どれを買おうかと迷ってしまうほど種類があります。
しかし、これらのほとんどが腸相を「良くするに至っていない」と、新谷弘実医学博士は自身の著書の中で書いています。
人間の腸内には元々、乳酸菌が棲みついています。このような菌は常在菌と呼ばれます。
常在菌は同種の菌であっても、外部から入ってきた菌を拒絶してしまう働きがあります。
これは無意味に拒絶するというのではなく、体内に入ってきた異物から体を守るというセキュリティシステムといっても良いでしょう。
そのため、生きたまま腸に届いても、そのまま腸内に住み続けることはできず、数日で死んでしまいます。
また、乳酸菌が体内に入り、最初に行くところは胃です。胃には強酸の胃酸が待ち受けています。
胃に入ってきた乳酸菌はその胃酸によって殺されてしまい、生きたまま腸に移動することはほとんどできません。
確かに、生きたまま腸に届くという乳酸菌を使ったヨーグルトもありますが、実際には、そのほとんどは胃酸によって死んでしまいます。
しかし、死んでしまった乳酸菌は腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境改善に効果があります。
ヨーグルトも前述の牛乳と同じように人によってはお腹がゆるくなってしまうことがあるため、自分にあった物を選ぶようにするのが良いでしょう。
また、乳酸菌はヨーグルト以外にも、ぬか漬けやキムチなどの発酵食品にも含まれています。
ヨーグルトに含まれる動物性乳酸菌よりも、ぬか漬けやキムチなどの発酵食品に含まれる植物性乳酸菌のほうが、一般的に酸に強い性質を持ち、胃酸に強い傾向があります。
乳酸菌を取りたい場合にはヨーグルト以外の選択肢があることも覚えておきましょう。
日本茶
日本茶は、非常に健康効果が高いことで知られています。
その健康効果をもたらすものが、渋味の成分でもある「カテキン」です。カテキンには、抗酸化作用や抗ウイルス作用、抗ガン作用、コレステロール低下作用、血糖値上昇抑制作用、殺菌・抗菌作用、虫歯・口臭予防、肥満予防などの働きがあります。
同様の渋味成分に「タンニン」というものがあります。じつはこのタンニン、古くから知られており、お茶の渋味成分と考えられていました。一方のカテキンは20世紀以降に化学構造が確認された成分で、その後、タンニンの大部分がカテキンで構成されていると判明され、タンニンとカテキンの関係性が明らかになりました。またタンニンも、カテキン同様の働きがあります。
タンニンを摂り過ぎると便秘や鉄分不足などの症状を引き起こす可能性があるため、タンニンを多く含む緑茶を飲むことは注意が必要とされていましたが、現在ではよほど濃いお茶を飲まない限りは問題ないとされています。
むしろ、緑茶による害は、カテキンやタンニンよりもカフェインにあることがわかっています。
ただし、カテキンやタンニンも胃に対し刺激をもつ成分でもあるので、過度に摂るのはやめ、適量を摂るようにしましょう。
マーガリン
マーガリンに含まれるトランス脂肪酸という物質が話題になったことがありました。トランス脂肪酸を多く摂取すると、血液中のLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少し、冠動脈性心疾患のリスクが高まることが報告されています。
マーガリンの主成分は、植物性油です。
植物油というと、体に良さそうに感じます。
サラダ油のような液体の油をバターのように固形にするために、水素を添加しますが、そのときにトランス脂肪酸が生成されてしまいます。
何とか植物油をバターに似せることはできたけれど、体に有害なトランス脂肪酸が混ざってしまったというわけです。
トランス脂肪酸は善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やします。
また、がん発症率を上げ、高血圧や心臓など循環器系にも悪影響を与えることがわかっています。
現在では、水素を添加しない製造方法が確立され、以前よりもトランス脂肪酸の生成の非常に少ないマーガリンが作られ、むしろバターの方がトランス脂肪酸が多くなっています。
しかし、マーガリンに限らず、油を多く使うような料理を日本人は摂り過ぎないようにしなければいけません。
欧米人は昔から油を使った料理を食べていましたが、一般の日本人が油料理を食べるようになったのはまだ数百年足らずです。そのため、日本人は油脂に対して強くはありません。
従って、動物性に限らず、植物性脂肪でも摂り過ぎないようにしなければ、胃相・腸相に悪影響を与えます。
肉類
日本人の食事も欧米化が進み、肉類を食べる人が急速に増えてきました。
近年、大腸がんが急速に増え続けていますが、これは日本人の食事の変化が大きな原因と考えられています。
筋肉を増やしたり、体の成長を促すためには、動物性たんぱく質を摂ることが合理的だと考えている人が多いと思います。
しかし、新谷弘実医学博士は著書でこう書いています。
「そうだとしたら、草食の鹿や馬の体は筋肉の固まりで、象やキリンは肉食のライオンよりも体が大きいのはなぜか」
成長や筋肉量増加のために肉類中心の食生活を送るのは、自然的ではないと考えられます。
たんぱく質は体の構成成分であり、最も大切な栄養素ではありますが、たんぱく質の摂り過ぎは健康を害する原因となります。
摂り過ぎることで消化しきれなかったたんぱく質は、腸内で腐敗してたくさんの毒素(アンモニア、インド―ル、メタンガス、ニトロソアミンなど)を産みだしてしまいます。
そのため、この毒素を解毒するためにたくさんの酵素を必要とします。
つまり、貴重な酵素を無駄遣いしているということです。
さらには、肉類には食物繊維が不足しているために蠕動(ぜんどう)運動が緩慢になり、毒素や便がいつまでも腸内に留まっていることになります。
また、動物性タンパク質を摂ると、同時に動物性脂肪も摂ることになります。
動物性脂肪は飽和脂肪酸を多く含んでいます。飽和脂肪酸を多く摂ると、血中コレステロールが増加し、血液をドロドロにしてしまい、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患のリスクが増加すると言われています。
酵素を豊富に含んだ食品が大切
体に良い食品とは、酵素を豊富に含んだ食品です。
酵素を豊富に含んだ食品を摂るには、加熱されていない生の食品を選ぶことです。これから代表的な「酵素を豊富に含んだ食品」をご紹介していきます。
生野菜
酵素の存在を重要視するのなら断然、生野菜を選ぶことが大切です。酵素は熱に弱いため、加熱されていない「生」の状態で野菜を摂ることが大切です。
生で摂ることで、熱に弱いビタミンBやビタミンCの補給も十分にできることになります。
また、ビタミンの中には、酵素の働きをサポートする「補酵素」となるものがあるので、
できることなら、野菜の皮や葉も食べるようにしましょう。
野菜の皮や葉には、ビタミンなどの他に抗酸化物質が豊富に含まれていることもお忘れなく。
発酵食品(納豆、味噌等)
発酵食品は、食材に微生物を作用させて作ります。
この食品にも酵素が豊富に含まれており、「活きている食品」です。
また、できるだけ納豆、漬物のように植物性の食材を使用した発酵食品を摂るようにしましょう。ただし、お酒も発酵食品と言えますが、加熱や濾過などによって酵母や酵母が死滅・除去されているので、酵素を摂るのには向いていませんのでご注意下さい。
その他、減塩醤油や減塩味噌などは、保存のために防腐剤が添加したものがあるので要注意です。
果物
果物は、他の食品以上に酵素を豊富に含んでいます。
そのため、食後ではなく食前30分前に食べてほしいと、新谷弘実医学博士は著書で書いています。
その理由は、果物は他の食品と比べて消化酵素をたくさん含んでおり、約30分で腸にたどり着き、果物自身の酵素で消化を行うと同時に、後から入ってくる食品の消化吸収のスイッチをオンにすることができるからです。
ですから、食事前はもちろん、お腹がすいたときなどに食べるのも良いですね。
まとめ
牛乳やヨーグルト、そして日本茶は、これまで体に良い食品として取り上げられることが多かった食品です。
胃腸への影響を意識しつつ、どの食品も摂り過ぎには注意しながら健康的な食生活を目指しましょう。
酵素が活きている食品を中心とした食生活に切り替える意識を持ちましょう。
【出典】
新谷弘実(2005)「病気にならない生き方」サンマーク出版