「最近なんだか疲れやすくなった」「休んでもなかなか疲れがとれない」
そんな状態から抜け出すためには、疲れやすくなっている原因を知ることが大切です。
できれば疲労をためずに、毎日元気に過ごしたいですよね。そこで、今回は疲れやすくなる原因や、その対処法について解説します。
疲れやすい原因とは?
まず、疲れやすくなってしまう原因をいくつかご紹介します。心当たりがあれば、すぐにでも改善しましょう。
栄養バランスが崩れた偏食
バランスのとれた食事は、疲れにくい体づくりの基本です。
例えば、糖質をエネルギーに変えるためにはビタミンB1が必要です。
糖質ばかりを摂取していても、ビタミンB1が不足していればうまくエネルギーに変換することができません。このように、偏食は栄養素の不足を招き、疲労の原因となってしまいます。栄養素のバランスが悪ければ、せっかく食べたものも無駄になってしまうのです。
また、疲れているときは自炊も面倒くさくなり、インスタントの食品や外食などに頼ってしまうことも多いかもしれません。
しかし、これらの食事は栄養バランスの偏りを生じやすく、さらに疲れやすくなってしまうという悪循環を招いてしまう恐れがあります。
最近では、健康志向の飲食店なども増えてきています。疲れていても、栄養バランスを重視した食事を心がけましょう。
同様に、過度な食事制限も、栄養不足を招きやすいので注意が必要です。バランスのとれた食事は、毎日の大切なエネルギー源になります。
運動不足による自律神経の乱れ
体を動かすと、余計に疲れてしまうと思うかもしれません。しかし、運動不足も疲れやすさを引き起こす原因のひとつです。
運動不足になると、自律神経のバランスが乱れてしまいます。自律神経の乱れは身体にさまざまな不調をもたらしますが、代表的な症状が「疲れやすさ」です。
運動不足によって新陳代謝が低下し、血液や水分の循環が悪くなることで疲れやすくなってしまうのです。
また、デスクワークで活動量が少ない人は、同じ姿勢や無理な動作を繰り返すことによって筋肉が過度に緊張し、疲労感や不調の原因になることも考えられます。
歩くことも立派な運動です。毎日、少しでも体を動かすように意識しましょう。
睡眠不足と睡眠の質
睡眠は、脳や身体を休める大切な時間です。
運動と同様に、睡眠不足も自律神経の乱れを引き起こしてしまいます。睡眠が不足すると、一時的な疲れがとれないだけでなく、慢性的な疲れやすさの原因にもなってしまうのです。また、私たちの生命活動に欠かせない酵素は、睡眠によって活性化されます。
体内酵素の不足も、疲れやすさの一因です。
起きて活動しているということは、それだけで体内酵素を消耗していることになります。
十分な睡眠をとることで酵素の消耗が抑えられ、体内酵素を豊富に保つことにつながります。なお、睡眠時間を十分に確保するだけでなく、睡眠の質を上げることも重要です。
寝る前にスマートフォンやパソコンを操作してしまうと、画面から発せられるブルーライトによって睡眠の質は低下してしまいます。
このような習慣も、睡眠不足を招き、疲れやすさの原因になるので注意しましょう。
疲れやすい人と疲れにくい人の違いってなに?
次に、疲れやすい人と疲れにくい人の違いに着目してみましょう。両者には、どのような違いがあるのでしょうか。
腸内環境が関係しているかも
意外に思うかもしれませんが、疲れやすい原因は腸にある可能性があります。
腸は、別名「第二の脳」とも呼ばれていることをご存知でしょうか。腸は、脳に次いで神経細胞が集中している臓器です。
そのため、脳からの指令がなくても独立して働くことができるのです。
例えば、脳死状態に陥った際でも、小腸が担う消化や吸収といった働きは止まることがありません。
その一方で、小腸の一部の細胞や大腸の細胞は、神経を通じて脳と密につながっています。
緊張する場面で、お腹の調子が悪くなった経験はないでしょうか。これは脳がストレスを感知し、胃腸に正常でない命令が届いてしまったためです。
反対に、腸の不調も神経を通して脳に伝わります。
その結果、脳細胞に影響を与え、イライラしたり、疲れやすくなったりしてしまうことが考えられます。
このように、脳と腸は双方向に影響を及ぼし合っているのです。そのため、腸内環境の悪化は、全身の健康に大きく影響を及ぼします。
疲れやすさも、例外ではありません。
便の匂いがきつい人や、便秘がちの人は、腸内環境が悪化しているサインなので注意が必要です。
改善するには食事から
そんな腸内環境を改善することは、疲れにくい体への第一歩です。そのために、まずは食事から見直してみましょう。
ここでは、食生活で気をつけるべきポイントをご紹介します。
食事は植物性85%:動物性15%のバランス
食事の内容は、植物性と動物性のものに大別できます。具体的には、野菜や果物、穀類などが植物性の食事です。
一方、肉や魚、卵や乳製品などが動物性の食事に該当します。理想のバランスは、1日の食事を植物性85%:動物性15%の割合になるように調整しましょう。
毎日の食事を思い浮かべてみてください。動物性の割合が高くなっている人がほとんどではないでしょうか。
現代の日本人は、動物性の食事を摂りすぎている傾向があります。
ここで、植物性の割合を増やすと、タンパク質が足りなくなるのではないかと不安に思う人もいるかもしれません。
しかし、植物性の食材の中には、大豆などの豆類を始め、実はタンパク質を豊富に含むものも多く存在しています。
これらをうまく活用すれば、1日に必要なタンパク質を十分に摂取することができるのです。
むしろ、タンパク質の過剰な摂取は胃腸に負担をかけてしまいます。
植物性の食事を増やすことで、タンパク質の摂取量が適正にすることは可能です。
食物繊維が豊富な食べ物を摂取する
腸内環境を整える代表的な栄養素が、食物繊維です。
食物繊維は、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」に分けられます。
水に溶けてゲル化し、便を柔らかくすることで便を出しやすくします。
水分を吸収し、便の量を増やすことで腸壁を刺激し、便通を促します。
このように、食物繊維は便通を改善することで、腸内環境を整える効果が期待できます。
また、食物繊維には、腸内でビフィズス菌をはじめとする有益な菌を増やす働きがあることも知られています。それにより、動物性の食事を摂りすぎたことで増えた有害な菌を抑え、腸内細菌のバランスを整えます。
そのような食物繊維は、主に植物性の食品に含まれています。
具体的には、野菜、果物、豆類、精製されていない穀物類、きのこ類、そして海藻類に多く含まれています。腸内環境を整えるために、これらの食品を積極的に摂取しましょう。
中でも、海藻類はおすすめの食材です。
海藻類を乾燥させた重量の50〜60%は食物繊維であり、効率よく食物繊維を摂取することができます。
また、海藻類には水溶性食物繊維の一種であるアルギン酸が含まれています。アルギン酸は、便通改善だけでなく、高血圧の予防や血中コレステロールの減少などさまざまな健康効果が期待されています。
ヒジキやワカメ、コンブなどの海藻類は、腸や全身の健康のためにも、とくに意識して摂りたい食材です。
新鮮な魚を食べる
魚には、不飽和脂肪酸という「善玉」の脂肪酸が含まれています。
不飽和脂肪酸は、脳の機能を保つために欠かせない栄養素です。
とくに、イワシやサバなどの青魚には、不飽和脂肪酸の中でも「DHA(ドコサヘキサエン酸)」や「EPA(エイコサペンタエン酸)」といった良質な脂肪酸が多く含まれています。
可能であれば1尾丸ごと買い、自分で3枚におろして食べるとより新鮮な状態で摂取することができます。
特に頭や内臓など1尾丸ごと食べられる小魚がおすすめです。
とはいえ、どんな食べ物でも摂りすぎは禁物です。魚であっても、動物性タンパク質の過剰摂取につながってしまい、腸の不調につながる恐れがあります。
健康にいいイメージのある魚ですが、1日あたり約100グラムを限度にするのがいいでしょう。
おすすめの生活習慣
さて、食事以外にも、腸内環境を整えるおすすめの生活習慣をご紹介します。
腸への負担を抑え、疲れにくい体を目指しましょう。
「適度」な運動
健康な毎日のために、運動は欠かせない習慣です。運動によって血行がよくなり体温が上がることで、体内酵素の活性化も期待できます。
酵素は、腸の働きをよくするためにも欠かせない存在です。しかし、激しい運動は体内に活性酸素を生じさせてしまいます。
活性酸素の分解のために酵素が消費されてしまい、かえって体によくありません。激しい運動は避け、適度な運動を心がけましょう。
呼吸があまり乱れず、心拍数が1分間あたり90〜100前後になる運動のこと
軽く汗をかく程度が目安になります。
また、楽しく続けられる運動であることも重要です。
運動を終えたときに疲労感を感じるようでは、運動の「しすぎ」に該当します。散歩や屈伸運動など、適度な運動を習慣にしましょう。
タバコ・飲酒を控える
タバコには、タール、カドミウム、ニトロソアミン、ホルムアルデヒドなど実に多くの有害物質が含まれています。喫煙は肺にダメージを与え、全身の毛細血管を収縮させます。
水分や栄養、酸素が行き届かず、血液やリンパの流れが阻害されてしまいます。これも疲れやすさの原因となります。
お酒は、分解されるときに大量の活性酸素を生じさせてしまいます。
このほか、食品添加物や残留農薬など、体に悪いものは世の中に数多く存在しています。
しかし、タバコもお酒も、自分の意志で遠ざけることができるものです。
健康のためにも、これらの習慣は断ち切りましょう。
朝にファスティングを行う
朝のファスティングも、腸内環境を整えるためにおすすめの習慣です。
ファスティングというと、何も食べないことをイメージするかもしれませんが、そうではありません。むしろ、必要な栄養素はファスティング中であってもしっかりと摂るべきです。
それでは、簡単にできる朝のファスティングの方法をご紹介します。
常温のよい水を500ml飲む
まず、朝起きたらペットボトル1本分のよい水を飲みましょう。
このとき、一気に飲むのではなく、5分程度時間をかけて、ゆっくりと飲むようにしてください。
よい水とは、還元力の高い水のことです。具体的には、マグネシウムやカルシウム、鉄、銅、フッ素などのミネラルがバランスよく入った硬水がおすすめです。
はじめは市販のミネラルウォーターでもいいでしょう。ただし、冷えた水は腸の働きを低下させてしまいます。ペットボトルを利用する場合は冷蔵庫で冷やさず、必ず常温のものを飲むようにしてください。
浄水器などで有害物質が除去されていれば、水道の水でも問題ありません。
心配な人は、良質な天然塩をひとつまみ加えると、塩素が中和されやすくなるのでおすすめです。
季節の野菜や果物を生のまま食べる
よい水で体内の細胞が目覚めてきたら、次にリンゴや柑橘類など、旬の果物を1〜2種類ほど食べましょう。
いつも朝ごはんを食べる習慣のある人は、腹持ちのいいバナナを加えてもいいでしょう。
野菜や果物など、生で食べるとその食材自体に含まれている酵素の力で、腸にあまり負担をかけることなく消化することができます。
時間がある人は、果物のほかにサラダを食べてもいいでしょう。野菜は果物に比べて繊維が多いので、よく噛んで食べるようにしましょう。
また、市販のドレッシングには、質の悪い油が使われていることが多いので、酢と塩、エクストラバージンオイルなどをかけて食べるのがおすすめです。
このように、朝だけでも腸を休ませることが大切です。
なお、ファスティング明けの昼食には、油っこい食事は避けてください。できれば、脂質の少ない和食がいいでしょう。
まとめ
疲れやすくなる原因や、その対処法について解説しました。
疲れやすさを解消するためには、関連のある腸を整えることが重要です。
食事をはじめとする毎日の生活で腸内環境を整え、疲れにくい体を手に入れましょう。
【出典】
新谷弘実(2005)「病気にならない生き方」サンマーク出版
新谷弘実(2008)「図解 病気にならない生き方」サンマーク出版
新谷弘実(2011)「自然免疫力をぐんぐん高める」日東書院本社
新谷弘実(2009)「免疫力を高める生き方」マガジンハウス
新谷弘実(2015)「認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい」SBクリエイティブ
新谷弘実(2008)「胃腸は語る」弘文堂