肉は体を元気づけると言いますが、実際のところはどうなのでしょうか?
日本人は長い歴史の中で植物性タンパク中心の食事をしてきました。
しかし、時代とともに欧米流の肉食やファストフードなどの食事スタイルなどが取り入れられるようになり、その食生活は大きく変わりました。
果たして、その食生活は日本人の体に合っているでしょうか?
今回は、肉食は体にとっていいものなのか悪いものなのか、またどうすれば健康的な食生活を送れるのかということを中心に解説していきます。
お肉の食べすぎが身体に与える影響とは?
肉こそ活力の源だと思っている人も多いのではないでしょうか?
たしかに、お肉を食べるとスタミナがついて元気になる気がしますよね。
しかし、実際はそうではありません。
これは間違った解釈であり、自然界を見てみれば正解は一目瞭然です。
肉食動物であるライオンは体ががっしりとはしていますが、実は長距離を速いスピードで走ることができません。
逆に、草食動物である鹿や馬は筋肉が発達しており、長い距離を速く走ることができます。
さらに地球上で一番大きな体を持つゾウも草食動物です。
このことから、肉食は「筋肉をつける」「体を大きくすることができる」と言い切ることはできません。
たしかに、動物性タンパクは成長スピードを早めてくれます。
ですが、歳をとり、成長スピードが落ちてきた場合にはどうなるのでしょうか?
また、人間の消化能力を超える動物性タンパクを摂っていたらどうでしょう?
時と場合によっては、肉を多く摂取することは、スタミナをつけるどころか成長スピードを早め、老化を早める原因になってしまいます。
・停滞便がこびりつく
・大腸の病気を引き起こしやすい
・高血圧、動脈硬化などの生活習慣病になりやすい
・細胞に遺伝子変化を起こさせポリープが作られやすくなる
肉食動物と人間の消化の違い
実を言うと、肉には食物繊維がほとんど含まれていません。
ここで、なぜ肉食動物は肉しか食べないのに平気なのか?という疑問に行き当たることでしょう。
実は肉食動物は野菜や草を食べる必要がありません。
言い換えれば、肉食動物の体は野菜を消化できる構造になっていないのです。
これは肉食動物の歯を見ればよくわかります。
肉食動物の歯は先端が尖っており、肉を引き裂くことはできても、野菜をすりつぶすことはできないのです。
消化器官を見ても同じことがいえます。
肉食動物の消化器官は短くできており、無理に野菜を食べたとしても、しっかりと消化することはできず、そのまま排出してしまうのです。
一方、人間はいわゆる雑食動物です。
肉食でも草食でもなく、様々な栄養をバランスよく食べることが良しとされる生き物です。
そのため、食物繊維の入っていない肉を食べ続けると腸内バランスが崩れてしまい、さまざまな体調不良やトラブルにつながる恐れがあります。
ちなみに、同じ人間でも、人種によって肉が得意な人種もいます。
その人たちは、そもそも肉食でも問題のないような体の作りを祖先から引き継いでいます。
もともと、植物性タンパクを中心に食事をしてきた日本人の場合には、体が肉食に向いていません。
日本人に向いている食事、それは世界から注目される健康的な日本食です。
お米や玄米を主食に、旬の野菜や海藻類、そして動物性タンパクは小魚で摂取するといった昔ながらの食事が向いているのです。
その状態が長引くと、「憩室」と呼ばれるポケットのようなものが腸にでき、そこに悪いものがたまります。
これがポリープやガンの原因になってしまうのです。
お肉を食べるときのおすすめの部位とは?
悪玉コレステロール、という言葉をご存知でしょうか?
健康診断の血液検査の項目でもよく見かけますよね。
コレステロールは一定量体内に必要ですが、数値が通常の範囲であれば問題ありませんが、血液中の悪玉コレステロールが増えすぎると血管壁にたまってしまい、血管をつまらせてしまうなどのトラブルを引き起こします。
食物繊維はコレステロールの吸収を穏やかにしてくれる作用があります。
食物繊維が多く含まれる食品は、玄米、とうもろこし、豆類、芋類、果物、きのこ、海藻などがあります。
肉を食べてもかまわなのですが、消化、吸収を助けてくれる食材と組み合わせ、うまく食事に取り入れましょう。
タンパク質の過剰摂取は酵素を大量消費する
肉食に含まれるタンパク質は栄養学的に理想的なものが多いです。
肉は腸の中でアミノ酸に分解、吸収され、血や肉になるとされています。
しかし、どんなに栄養価の高い肉でも、必要以上に摂りすぎてしまうと体にとっては毒となります。
動物性タンパクを大量に摂りすぎてしまうと、胃腸で分解、吸収が完全には行われず、腸内に未消化物が残り、それが腐敗し、そこから大量の毒素が発生してしまいます。
その毒素とは、硫化水素、インドール、メタンガス、アンモニア、ヒスタミン、ニトロソアミンなどです。
それに加え、フリーラジカル(※)も生み出します。
(※体内で脂質と結合して有害な過酸化脂質を作る物質で病気の元となります。体内のサビとも呼ばれています。)
こうした毒素を解毒するために体内の酵素が大量に消費されます。
体内の酵素が消化や解毒に大量に消費されてしまうと、酵素の残りが少なくなってしまい、新陳代謝や他の食材の消化に追いつかなくなってしまいます。
人の体重の1キログラムあたりに必要なタンパク質は約1グラムです。
よって、体重60キロの人であれば必要なタンパク質は60グラムで足りるのです。
しかし、日本人の平均的なタンパク質の摂取量を見てみると、タンパク質を必要以上に摂取している人が多く存在します。
過剰に摂取したタンパク質は最終的に尿として排出されるのですが、尿となるまでに体にさまざまな悪影響を及ぼします。
どのような影響を及ぼすのか、簡単に説明します。
アミノ酸は肝臓でさらに分解され、血液に流れ込みます。
血液のphは、通常はアルカリ性にも酸性にも傾かない中間を維持していますが、アミノ酸が血液中に流れ込むことで血液は酸性に傾きます。
体が異常を察すると、それを中和させるため、大量の水とカルシウムを必要とします。
そして、この間にも消化酵素は大量に消費されてしまうのです。
タンパク質の過剰摂取が行われた時の健康被害は深刻といえるでしょう。
まとめ
動物性タンパクを中心とした食事は、胃や腸を消耗させるだけでなく、体内の酵素を大量に消費してしまいます。
肉を食べると「元気になる」「筋肉がつく」いう話を耳にしますが、長い目で見ると体にとっては負担がかかってしまう食事習慣なのです。
お肉をバランス良く食べるように日々意識しましょう。
【出典】
新谷弘実(2005)「病気にならない生き方」サンマーク出版
厚生労働省 e-ヘルスネット