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2023.05.25 公開 | 2023.08.31 更新

マーガリンが健康に悪いのは本当?トランス脂肪酸が身体に与える影響について解説

マーガリンが健康に悪いのは本当?トランス脂肪酸が身体に与える影響について解説

マーガリンが身体に悪いと言われる理由

病院のベッドに寝ている男性

「マーガリンが体に悪い」というのは本当なのでしょうか?
動物性脂肪のバターの方が植物性油脂で作られるマーガリンに比べ、コレステロールが高く、それ故、体に悪いと言われ、マーガリンがもてはやされてきました。
しかし、近年、「トランス脂肪酸」という存在がクローズアップされ、トランス脂肪酸を含むマーガリンなどの加工油脂類は、体に悪いものの代表となってしまいました。
では、この「トランス脂肪酸」とは、一体どんなものなのでしょうか。

トランス脂肪酸とは

通常、植物性油脂には「不飽和脂肪酸」というものが含まれるため常温・常圧下では液体の状態で存在しています。
そしてマーガリンは、この液体状の植物性油脂に水素を添加することで、バターと同じ固形の油脂へと変わります。しかし、この水素を添加することで「トランス脂肪酸」が生まれてしまうのです。
通常、植物性油脂に含まれる「不飽和脂肪酸」は、その構造の一部分が折れ曲がった形をしていますが、水素を添加する際、一部の不飽和脂肪酸は、真っ直ぐな構造へと変化してしまいます。この真っ直ぐな構造の不飽和脂肪酸が「トランス脂肪酸」です。

トランス脂肪酸が身体に悪影響を及ぼす

トランス脂肪酸を多く摂取すると、血液中のLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少し、冠動脈性心疾患のリスクが高まることが報告されています。
では、トランス脂肪酸は自然界には存在しないのでしょうか。

トランス脂肪酸は自然界にも存在している

トランス脂肪酸は、マーガリンのほか、同じ固形化植物油脂であるショートニングを作る際に発生してしまうほか、牛などの反芻動物の乳や脂肪にも含まれています。

植物脂は常温だと液体になるがマーガリンは固体のまま

油の主成分である脂肪酸は、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに分類されています。体に有益な不飽和脂肪酸には、体内で生成できない必須脂肪酸が含まれています。
もともと植物油というのは常温で液体です。
これは、植物油に融点の低い不飽和脂肪酸が多く含まれるからです。
同じ油でも植物性の脂肪が常温で固体であるものは、飽和脂肪酸を多く含んでいるからです。
ところが、マーガリンは植物油であるにもかかわらず固まっています。
なぜマーガリンが常温下でも固まっているのかというと、水素を添加し、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に人工的に変化させているからなのです。

植物油は液体であるため、そのままでは用途が限られてしまいますが、上記の通り水素を添加して不飽和脂肪酸を人工的に飽和脂肪酸に変化させることで、植物油に動物脂のような固体としての特性を持たせることができます。
このような方法で加工された植物油は硬化油と呼ばれ、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングとして菓子や加工食品に幅広く使用されています。
お菓子のサクサク感やなめらかな舌触りといった食感は、まさに硬化油のおかげといえるでしょう。
また、硬化油は酸化されにくい特徴を持つため、食品の日持ちを良くする目的でも使用されています。このように、植物油から合成される硬化油は加工食品には無くてはならない材料になっているのです。

トランス脂肪酸の悪影響

医師に問診を受けている男性
トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすほか、ガン、高血圧、心臓疾患の原因になるなど、さまざまな健康被害をもたらすことが報告されています。

一般的に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高く、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低い状態は、動脈硬化や虚血性心疾患のリスクを高めると考えられています。

悪玉コレステロールを増やし善玉コレステロールを減らす

トランス脂肪酸は、疫学的調査結果から、総エネルギーに占めるトランス脂肪酸の摂取割合が増加するのに伴って、血液中の総コレステロールが増加することがわかっています。
さらに詳細に調べてみると、増加したのは主に悪玉コレステロールであり、善玉コレステロールはむしろ減少する傾向があることがわかりました。
このような作用は、動物性の飽和脂肪酸よりも顕著であり、トランス脂肪酸がたとえ植物油由来といえども、動物性脂肪以上に悪玉コレステロールの増加作用を持つ可能性を示しました。

癌・高血圧・心臓疾患のリスクを高める

悪玉コレステロールが増加すると、末梢(まっしょう)に運ばれるコレステロールが増加し、その結果、血管壁にコレステロールが沈着し、血管の弾力性を失わせたり(動脈硬化)、血管の内腔を狭め、時には詰まらせたりする原因になると考えられます。
もしもこのような変化が心臓の筋肉に酸素やエネルギーを供給する冠動脈で生じると、狭心症や心筋梗塞を引き起こすことになります。
このようなことから、トランス脂肪酸は、癌・高血圧・心臓疾患のリスクを高めると考えられています。

まとめ

バターを大量に使用して料理している女性

マーガリンの原料である植物油は、もともとは液体状ですが、使いやすさなどから、水素を添加して硬化油に加工します。しかし、その加工によって「トランス脂肪酸」が生まれてしまいます。
欧米諸国では、トランス脂肪酸に関して、マーガリン等に含まれる量に上限を定めています。
日本では、欧米と比べ、油脂類の摂取量が低いとのことから、トランス脂肪酸の害も低いと考えられ、特に基準は設けられていません。
しかしマーガリンのメーカーは、いち早くこれに対応し、現在では水素を添加しない製造方法を確立し、バターよりもトランス脂肪酸の含有量の低いマーガリンが販売されています。

同じマーガリンを使うにしても、トランス脂肪酸の含有量の低いものを選ぶようにしたいですね。

【出典】
新谷弘実(2005)「病気にならない生き方」サンマーク出版
文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)

※記載内容は特定の商品又は酵素食品についての効果効能を保証するものではありません。

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