酵素とは
私たちの体の中ではさまざまな化学反応が起きています。
食べたものを消化するのも、そこからエネルギーを生み出すのもすべて生化学反応で、この反応なしにはどんな生物も生きられません。
この反応の仲立ちをするのが「酵素」です。
人体の中には、5000余種類の酵素が働いています。
この酵素を働きで分類すると、食物の消化吸収に関係する消化酵素と、体のさまざまな働き(機能)に関係する代謝酵素に分けられます。
しかし、この他に食物酵素と体外酵素と呼ばれるべきものがあり、これらも重要です。
そこで、食物酵素と体外酵素、消化酵素、代謝酵素についてそれぞれ解説します。
食物酵素
食物酵素は、新鮮な野菜や生魚、発酵食品などの食物に含まれている酵素であり、人体の外でつくられるので体外酵素とも呼ばれています。
消化酵素や代謝酵素は人体がつくっているのに対し、食物酵素や体外酵素は人間がもらって利用している酵素です。
胃に入った食物は胃の上部から下部に移動しますが、上部では胃の消化酵素であるペプシンもなく唾液中のアミラーゼ、食物酵素が事前消化をします。
そして、下部に移動し事前消化された食べ物が、酸やペプシンで本格的に消化されます。
つまり、「食物酵素による事前消化」と「体内酵素による消化」が行われます。
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消化酵素
消化酵素は体内酵素の1種で、不足すると食欲がなくなります。
エドワードハウエル博士曰く、これは消化酵素の「適応分泌の法則」と言われています。
このことからわかることは、体中の組織や備蓄されている酵素(予備酵素)は無制限にたくさんあるわけではなく、必要なだけを使うようになっているということです。
代謝酵素
代謝酵素は体内酵素の1種です。
皮膚も健康的ではなくなり、爪が割れ、髪の毛が抜けるのも代謝酵素が欠乏したことが原因と考えられます。
食べたものからエネルギーを生み出したり、体の様々な機能、生命活動に関わっているのが代謝酵素です。
また、血液の濃度をちょうどよく保つには10余種類の酵素が関与していますし、免疫にも多くの酵素が関わっています。
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酵素が多い食べ物
酵素を多く含む食べものは、生きている食べものです。
そのため、できるだけ生きているもの、新鮮なものを選び、なるべく熱を加えずに食べることがおすすめです。
酵素を摂る時は加熱をしない
酵素は水の中で加熱した場合、48~65度でほとんど破壊されます。60~80度で30分加熱すれば、どんな酵素でも完全に破壊されます。
さらに、水の中での加熱の方が、水を使わない場合よりも多く破壊されます。
食べ物の酵素の違い
どんな食べものも、消化吸収する際には体内の酵素が消費されます。
酵素の豊富な食物がよいとされるのは、そうした失われる体内酵素を少しでも補給することができるからです。
通常の食物は胃から腸に届くまで2~4時間ほどかかりますが、果物は30分ほどで腸へ届きます。これは、果物自身が消化酵素をたくさん含んでいるためと言われています。
また、果物の種類によっては、自分自身を消化吸収してもまだ酵素をもっているものもあります。
例えば、パパイヤ、パイナップル、イチゴ、キウイなどです。
生野菜
野菜は、皮の部分に抗酸化物質が入っているため、葉っぱや皮まですべて食べることがよいです。野菜を選ぶときにはできるだけ太陽をいっぱい浴びた有機農法の健康な野菜を選ぶようにしましょう。
抗酸化物質が豊富な野菜は、酵素も豊富なよい食べものです。
生の果物
果物は、多くの酵素をもっています。
そのうえ、食物繊維やビタミンミネラル、抗酸化作用のあるファイトケミカルも豊富に含んでいます。
ただ、皮をむくと酸化が始まってしまうため、むいたらすぐに食べるようにします。
発酵食品(植物性)
発酵食品は、微生物が有機物を分解し、アルコールや有機酸などを生成する「発酵」という現象を利用して作られた食品です。
私たちの体内で、腸内細菌がたくさんの酵素を作ってくれているように、発酵食品に含まれる微生物も、発酵の過程で多くの酵素を生み出しています。
酵素を多く含む発酵食品は、まさに「生きた食べもの」なのです。
健康のカギは「体内酵素」の量
人間の生命活動は、数多くの酵素によって支えられています。消化吸収、新陳代謝、体内に入った毒素を分解して解毒するのも酵素の働きです。
そのため、酵素の量と活性度が健康状態に大きく影響します。
体内酵素を消費する食生活とは
体がもっとも多くの酵素を消費するのは、解毒のときです。
毒素を生み出す生活習慣が健康を損なうのは、解毒で酵素を大量に消耗してしまうため、健康維持に必要な酵素が十分に作られなくなってしまうからなのです。
酵素を消耗する食生活は、お酒やたばこの常用、大食、食品添加物を含んだ食事、ストレスの多い生活環境、医薬品の使用、といった生活習慣です。
そのほかにも、悪い食事によって腸内で作り出された毒素や、休養をとらない不規則な生活、便秘がち、動物食ばかりたくさん食べる、といった食生活でも酵素は減少します。
酵素を増やす方法
酵素をたくさん含むフレッシュな食物を多く食べ、酵素を生み出してくれている腸内細菌が活発に働くような腸内環境をつくることで酵素は増えます。
また、規則正しい生活をすること、幸福感を感じること、体を冷やさないことも、酵素を増やし、働きをよくします。
酵素の原型を使わないことが大切
食べものに含まれる酵素は、そのままのかたちで体に吸収・活用されるわけではありません。消化の過程で分解され、ペプチドやアミノ酸として吸収されます。
アミノ酸として吸収されるからといって、単にアミノ酸を摂った場合よりも、酵素を多く含むものを食べたほうが、酵素ができやすいことが臨床データからわかっています。
規則正しい生活
健康で長生きするためには、酵素の消耗を防ぐ食生活に加えて、酵素を増やして活性化させる食生活も必要です。そのために実践していただきたいことが「7つの健康法」です。
- 正しい食事
- よい水
- 正しい排泄
- 正しい呼吸
- 適度な運動
- 上手な休息・睡眠
- 笑いと幸福感
この健康法を実践することで、胃腸、血液、リンパ、尿、呼吸、そして気の流れがよくなります。
こうしたよい循環は互いに影響しあっていて、すべてを実践することで、体はその能力を最大限に発揮することができるようになります。
バランスのいい食事
体によい食事には、健康に育った食べものをできるだけ新鮮なうちに食べることと、動物食を控え穀物中心の植物食を心がけることです。
しかし、どんなによい食事も、よく噛んで食べなければその効果は半減してしまいます。
食べものは、噛めば噛むほど胃液や胆汁ともよく混ざり合い、消化・吸収がスムーズに行われるようになるからです。
胃腸に問題がある人はもちろん、健康な人も30~50回は噛むようにしましょう。
酵素を含んだ食品の摂取
酵素を含んでいる食物は「生きている食物」です。食物に含まれる酵素の量を正確に知ることはむずかしいですが、できるだけ農薬など極力使わない自然な環境で育ったもののほうが酵素は多いです。
ただ、どんなに酵素が豊富でも、時間がたてば減ってしまうため、ナチュラルでフレッシュなものほど酵素は多いのです。
まとめ
体内に酵素が豊富にあれば、生命エネルギーも免疫力も高いと言えます。酵素は、何もしなくても無尽蔵に増えるものではありません。
正しい食事と酵素を無駄づかいしない生活習慣を心がけたときに、生命そのものが作り出す貴重なエネルギーのもとなのです。
その貴重な酵素の消耗をいかに抑えるかが、病気を治し、健康で長生きする秘訣なのです。
【出典】
新谷弘実(2005)「病気にならない生き方」サンマーク出版
新谷弘実(2008)「図解 病気にならない生き方」サンマーク出版
エドワード・ハウエル(2009)「医者も知らない酵素の力」中央アート出版社
新谷弘実(2011)「病気にならない生き方2 実践編」サンマーク出版