日本人の体は油の消化に適さない
日本人の体は、欧米人のように油ものをたくさん消化することはできないといわれています。
日本人の中には、胃のあたりの痛みを訴えて内視鏡検査をしたところ、胃炎も胃潰瘍もなく、十二指腸に潰瘍ができている様子もないというケースが多く見られます。
そういう人は、血液検査をすると、たいてい膵臓の異常を示すアミラーゼ値が高いという結果が出ています。
そして食歴を聞くと、揚げものが好きで食べる頻度も高いのです。
ところが、欧米人は同じ量かそれ以上の油ものを食べていても、膵臓にトラブルが発生する人はあまりいないといわれています。
日本人が日常的に揚げ物を食べるようになったのは江戸後期
徳川家康は天ぷらが大好きだったという話は有名ですが、もともと日本には油を使った調理法というのはありませんでした。
「揚げる」という調理法が日本に伝わったのは、安土桃山時代といわれています。
当時は「油」そのものが貴重品でしたから、油が伝わったとはいえ、庶民の口に入るようなものではありません。
日本人が日常的に「揚げもの」を食べるようになったのは、江戸時代も後期に入ってからです。
つまり、日本人が「油もの」を食べるようになったのは、ここ150~200年ほどのことなのです。
日本人の膵臓の機能は欧米に比べて弱い
ギリシャ、イタリアなどの地中海に近い国の人々は、古くからオリーブを栽培・多用していたため、オリーブオイルなど油を使った料理を昔から食べていました。
その歴史は6000年近くもさかのぼることができるといいます。
こうした日本と欧米の食文化の違いは、遺伝子の中に「油を消化する」システムとして組み込まれていることが考えられます。
油は膵臓で分解・消化されますが、新谷酵素を監修した新谷弘実医学博士の臨床データによると、日本人の膵臓の機能は古くから油ものを食べてきた国の人と比べて弱いとのことです。
もしもあなたが週に2、3回油ものを食べていて、上腹部に痛みを感じることがあるようなら、膵炎を起こしている可能性があります。
早めに膵臓の検査を受けることをお勧めします。
特に動物性脂肪は控えているが、植物性の油なら大丈夫と、天ぷらや油炒めなどを好んで食べている人は要注意です。
植物性の油であっても、人工的に抽出した油(溶剤抽出法)をひんぱんに摂るのは、やはり体のためには良くないのです。
油は酸化しやすい
食物などが酸化を引き起こす条件として、「空気中の酸素との接触」「加熱」「光」が、主な原因として挙げられます。
もっとも酸化が進みやすい食物の代表が「油(脂)」です。
分子構造上、不飽和脂肪酸が多い油は酸化しやすいという特徴をもっています。油の酸化も「酸素・熱・光」の3つが原因です。
油が酸化すると、過酸化脂質が生成されます。
過酸化脂質は人の体に有害な物質で、肝臓障害や動脈硬化を引き起こす可能性を持ち、DNAを損傷させる発がん性物質とも指摘されています。
酸化した食品を摂取するとフリーラジカルが発生
酸化した食物が体内に入ると、フリーラジカル、とくに活性酸素を作り出す原因となります。
フリーラジカルは、細胞内の遺伝子を壊し、ガンの原因をつくるなど、さまざまな健康被害をもたらすことで知られています。
酸化した食べ物によって発生するフリーら自活以外に、白血球などが作り出すフリーラジカルもあります。
これらのフリーラジカルは、悪者扱いされることの多いフリーラジカルですが、じつは体内に入り込んだウイルス、細菌、カビなどを退治し感染症を防ぐという、体にとって欠かすことのできない働きもしています。
ただ、それが一定量以上に増えてしまうと、正常な細胞の細胞膜やDNAを壊してしまうのです。
フリーラジカルによって体内の酵素を大量消費する
私たちの体には、フリーラジカルが増えすぎてしまったときのために、フリーラジカルを中和する働きをもつ抗酸化物質、「SOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)」と呼ばれる酵素が備わっています。
フリーラジカル・活性酸素は、体内に侵入したウイルスや細菌を退治する機能を持っていますが、過剰に増えると細胞を傷つけてしまう存在となります。
これを中和するため、SODやなど、抗酸化作用を持った代謝酵素が使われます。“解毒”と“抗酸化”のダブルヘッダーで、酵素は消耗してしまうのです。
油を摂取するなら食物に含まれる油を摂りましょう
油の主成分である脂肪酸は、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに分類されます。
体に有益な不飽和脂肪酸には体内で生成できない必須脂肪酸が含まれていますので、食事を通じて良質な脂肪を摂ることが大切です。
魚から摂るのがおすすめ
必須脂肪酸はオリーブオイルなどにも含まれていますが、絞った油はどうしても酸化しやすいので、もっともいい摂取方法は、酸化しにくいイワシやサバなどの青魚に含まれる脂肪から摂ることです。
青魚に含まれるDHA・EPAには良質な脂肪酸が多く含まれる
マグロ、カツオなどの赤身や、サバ、イワシなどの青魚は、DHA・EPAが多く含まれています。
ただ、魚に含まれる脂は酸化が早いので、刺身を購入するときはサク(ブロック)を選び、食べるときには、空気に触れている(酸化している)サクの表面5㎜くらいを切り落として、時間をおかずに鮮度が良い状態で食べることがポイントです。
まとめ
私たちが通常「油」といっているのは、植物の食べ物から絞ったものです。
絞った油は酸化しやすいので、できるだけ使わない方がいいでしょう。
天ぷらや揚げものが好きでどうしてもやめることができないという人は、揚げ油にはトランス脂肪酸を含まない良質な植物油を選び、揚げたてをすぐに食べることが大切です。
どんなに良い油を使っても、揚げてから時間が経つと、油が酸化して、体内にフリーラジカル作り出してしまいます。揚げものは食べる回数を減らし、月に一度ぐらいようにするといいでしょう。
外食産業では、トランス脂肪酸を含む油が使われていることが多いので、揚げものはできるだけ避けた方が安全といえます。揚げ物も時には楽しみつつ、油の質も意識するとことを健康のためにはおすすめです。
【出典】
新谷弘実(2005)「病気にならない生き方」サンマーク出版
新谷弘実(2008)「図解 病気にならない生き方」サンマーク出版
新谷酵素(2020)「酵素LIFEのすすめ」