酵素が体に取り込まれるまで
酵素を摂取することは健康をサポートするため、酵素を多く含む食物を積極的に選ぶことは体によいことだと何となく認識している方は多いのではないでしょうか?
具体的に酵素が体に取り込まれた後は、どのように体へ働きかけるのかを紹介します。
食物酵素は、胃の中で事前消化に働きかけ、その後吸収される
そもそも酵素は体に元から存在するものですが、医学博士エドワード・ハウエル氏によると体内の酵素は無制限に備蓄されているわけではなく、限りがあるものだと考えられています。
そのため体内酵素の浪費を抑える目的で食事から食物酵素を摂取することが推奨されているのですが、新たに体内へ取り入れた酵素は、どのように体へ取り込まれていくのかは疑問ですね。
体内の酵素は役割ごとに大きく分けて、2グループに分類されます。
食事から取り入れた食物酵素は、唾液やその食物自体がもつ酵素の作用によって事前消化を行います。
そのため酵素をふんだんに含む食物を食べると、食物独自の酵素が活性化して体内酵素を節約しながら消化を行うことが可能です。
体にもともと保持している体内酵素を浪費せずに消化の準備が整うので、その後に摂取した食事の消化が効率よく進みます。
食物酵素は自身がもつ酵素で自ら消化を促進し吸収されるだけでなく、後から取り入れた食物の消化もサポートするなど、体の健康を支えるのに欠かせない存在です。
食物酵素を取り入れて事前消化されることにより、消化器官では食物のスムーズな消化が進んで腸内環境が整います。
未消化物が減るとそれをエサにしている悪玉菌も減り、その代わりに善玉菌が活発にはたらくという嬉しい変化もあります。
善玉菌は体内酵素を作る役割ももつので、滞りなく体内酵素の分泌が進んでいくといういいことずくめとなります。
酵素も分解される
先で紹介したように酵素は食事によって取り入れた食物を、小腸で吸収しやすい状態へ分解・消化したり、吸収した栄養を身体組織の修復や細胞の再生を行ったりと健康維持を支える役割をもちます。
食物を分解させるためにはたらきかける物質である酵素ですが、実は酵素自体も分解され、その後は体に吸収されて体の活動を支える栄養へと変化していくのです。
そもそも酵素はタンパク質から成っており、消化が進む過程で分解され吸収されていきます。
体内へ取り込まれた食物酵素は、食物の性質に応じた消化酵素の作用により分解・消化が進む仕組みが出来ます。
例えばある研究結果によると、炭水化物を多く摂取したら炭水化物を消化するアミラーゼという消化酵素が、たんぱく質を多く摂るとタンパク質の消化を進めるプロテアーゼという消化酵素が積極的に分泌されることが分かっています。
そのためタンパク質から成る酵素は、自身の酵素によって分解・消化されるのと同時にペプシンという物質を含むプロテアーゼによって消化が促進されます。
胃で酵素の分解・消化が進んだ後は十二指腸へと送られて、そこでさらに膵液により消化され、小腸へ到着する頃にはアミノ酸やペプチドの物質へと形を変えます。
この状態になるとようやく栄養として体へ吸収され、活動や細胞の活性化へと役立っていく仕組みです。
酵素にはこんなメリットがある!
人間の体内には5,000種類以上の体内酵素が存在して消化をサポートしていることは、研究により明らかになっていますが、体内酵素の生成には限界があるかどうかはまだはっきりとした研究結果は出ていません。
ただ胃腸内視鏡学のパイオニアであり、日本・アメリカで活躍していた新谷弘実医学博士にの臨床経験に基づいた見解では、食物酵素を摂ることで体内酵素にも好影響を与えるということがいわれています。
臨床経験に紐づけられた仮説やメリットを紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
酵素をたくさん摂っている人は体内酵素が多い
胃腸内視鏡外科医として累計35万人もの胃腸を直接見てきた新谷弘実医学博士の臨床経験によると、日常的に食物酵素がふんだんに含まれるフルーツや新鮮な野菜をたくさん摂っている人は、胃や腸がきれいな状態にあるといえるようです。
1人1人の患者の食事を細かくリサーチしていき、集められた臨床データによって裏付けられた理論は、体内酵素の存在を考えるきっかけとなっています。
仮説:ミラクル・エンザイムが存在する
新谷弘実医学博士は食物酵素をたっぷりと摂取している人は体内酵素が多いという臨床経験を元に、人間の体内には酵素の原型が存在しているという仮説を導いています。
特定の消化酵素・代謝酵素には酵素の原型があって、必要に応じて変化する仕組みをもっており、新谷弘実医学博士はこれをミラクル・エンザイムと命名しています。
仮説では酵素の原型となるミラクル・エンザイムの量によって健康状態に変化を及ぼすため、食物酵素を食事から摂取して体内酵素を補いつつ、体内酵素の浪費を防ぐことを推奨しています。
まだあくまでも仮説ではありますが、酵素が豊富に含まれた食事を心掛けることは食物の分解・消化をサポートするため、体へかかる負担を軽減するためにも食物酵素を意識した食事をしてみてはいかがでしょうか。
ミラクル・エンザイムが存在すると考えた背景
体内酵素はまだ研究途中にあり、ミラクル・エンザイムが存在するという新谷弘実医学博士の見解は論文で証明されているわけではありません。
ですが、胃腸内視鏡分野の世界的権威である新谷弘実医学博士が立てられた仮説の根拠を知ることで、体内酵素・食物酵素への理解が深まりますし、自身や周りの人への健康意識の向上にもつながるというメリットもあります。
これまでとこれからの食生活を見直してみるきっかけとして、参考にしてみてください。
【理由1】ある部位でエンザイムが消化されると、別の部分のエンザイムが不足する
仮説ではミラクル・エンザイムは特定の消化酵素や体内酵素の原型とされています。
このミラクル・エンザイムは必要に応じて変化するため、食事の内容によって特定の器官でエンザイム(酵素)がたくさん使われると、別の部位でのエンザイムが不足するという現象が起こります。
例えば食事をしてお腹いっぱい食べると、その後は頭がぼーっとしたり体がだるいと感じたりするのは胃という特定の部位で消化酵素が活発に使われているために、代謝酵素が不足していることと相関関係があるように認識できます。
腹八分目で食事を終えると頭が冴えてパフォーマンスが上がるのも、食事量を抑えているぶん脳の活動に使われる代謝酵素が活性化していることも何となく理解できます。
【理由2】徐々に体の耐性が強くなっていく
さらにアルコールやタバコ・薬などに耐性ができることも仮説を裏付ける根拠として挙げられています。
アルコールは摂取すると肝臓で分解・消化が進められますが、このとき肝臓では何種類もの酵素が消費されています。
アルコールに対する酵素の分解スピードや酵素の量は人によって差があり、すぐ分解し消化する人はお酒に強くなかなか分解が進まない人はお酒に弱いとされています。
ただ最初はアルコールに弱い人でも、少しずつ慣れていくと以前よりも飲めるという経験をしたことがある人は多くいますよね。
これによりアルコールを頻繁に摂取すると、体がだんだんと酵素がこれまでよりも多く肝臓での分解酵素を使うように変化したと考えることもできます。
アルコールなどへの耐性も、必要に応じて変化するミラクル・エンザイムの存在を意識できる根拠の1つと考えられるかもしれません。
まとめ
酵素は食事を分解し消化を促進するために不可欠な物質であると同時に、酵素自体も栄養素として体の活動や健康をサポートする、体に欠かせない存在です。
まだ仮説ではありますが新谷弘実医学博士によって導かれたミラクル・エンザイムも、これからの健康を考えるうえで意識しておきたいキーワードですね。
まだまだ研究途中である酵素は不明な点も多いですが、健康を目指す上ではは不可欠なことに変わりありません。
酵素を意識した食生活を過ごしてみてはいかがでしょうか?
【出典】
エドワード・ハウエル(2009)「医者も知らない酵素の力」中央アート出版社
新谷弘実(2005)「病気にならない生き方」サンマーク出版
公財団法人日本食肉消費総合センター