私たちは、寝ていても、仕事をしていても、食事をしているときも、どのようなときでも常に呼吸をしています。
しかし、その呼吸を意識することはほとんどないですね。
このように、意識しなくても呼吸ができるのは、呼吸が自律神経に支配されているからです。
自律神経に支配されているものは、意識しなくても動くかわりに、心臓にしても胃腸にしても、自分の意志で動かしたり止めたりすることができません。
この呼吸の特性を活かした健康法が「腹式呼吸」です。
そこで、ここでは腹式呼吸のメリットや正しい効果的なやり方について解説します。
腹式呼吸とは
腹式呼吸は、優れた健康法です。
上述したように、自律神経に支配されているもののうち呼吸だけは意識的にコントロールすることができます。
つまり、意識的にコントロールできる呼吸を正しく行うことで、乱れがちな自律神経を整えることができるのです。
また、口呼吸の習慣が身についてしまっている人は、鼻をつかった腹式呼吸を行い、日常的にも口を閉じて鼻で呼吸することを心がけましょう。
体の器官の機能から考えても、口はものを食べるための器官であって、呼吸をするためのものではありません。呼吸のために人間に備わっているものが鼻なのです。
余談ではありますが、お酒を飲みすぎるといびきをかく人がいます。
これは、アルコールの摂取により鼻の粘膜が腫れ、鼻での呼吸がしづらくなるため、無意識に口で呼吸をしているからです。
口呼吸では、十分な酸素を吸収できず、血中酸素濃度はどうしても低下してしまいます。
アルコールを飲んだ翌朝やアレルギー性鼻炎の人は、心筋梗塞を起こしやすいと言われていますが、これは口呼吸によって血中酸素濃度が低下していることが大きな要因の1つなのです。
以下に、腹式呼吸についてと、口呼吸のデメリット、鼻呼吸のメリットについてさらに詳しく解説します。
お腹を膨らませる呼吸法
腹式呼吸とは、お腹を大きく動かす深呼吸です。
普段の呼吸よりもずっと多くの酸素を取り込むことができるので、血中酸素濃度が上がり、新陳代謝が活発になるので、体には多くのメリットがあります。
また、腹式呼吸は場所も道具も必要としないため、いつでもどこでも気軽に取り入れられる優れた健康法なのです。
正しいやり方については、本記事後半にある「腹式呼吸のやり方」で詳しく解説します。
口呼吸のデメリット
さて、あなたは普段、鼻呼吸をしていますでしょうか?実は最近、口で呼吸をする人が増えているのです。
ある調査によると、成人の約半数、子どもではなんと約8割が恒常的に口で呼吸しているという結果も出ているほどです。
試しに、口を手でふさいでしばらく呼吸をしてみてください。
もしこの状態で息苦しさを感じるようなら、無意識のうちに口で呼吸している可能性があります。
実は、口呼吸は自然の摂理に反するとても体にとって悪い行為で、酸素の吸収率や免疫機能を低下させ、病気のリスクを高める危険な呼吸法なのです。
鼻呼吸のメリット
逆に、鼻呼吸をすることは、口呼吸では得られないメリットがあります。
1つ目は、吸い込んだ空気をきれいにする除塵作用です。
私たちが吸っている空気の中には、小さなほこりや微生物、そして微生物の市街などいろいろなものが含まれています。
鼻で呼吸することによって、こうした有害物を鼻粘膜が除去してくれているのです。
鼻粘膜は、有害な病原菌の約50~80%も除去できることがわかっています。
2つ目は、鼻呼吸によって鼻腔内を通るあいだに空気が適度な加湿と、湿度調節がされる作用です。
口呼吸によって乾いた空気がたくさん取り込まれていると、肺が乾燥しすぎたり、湿度が低すぎて空気がうまく粘膜になじまず、酸素の吸収率が悪くなります。
そこで、鼻呼吸をすることで、空気が適度な加湿と温度調節が同時になされるので、外気が冷たい季節でも、酸素の吸収率が低下するのを防ぐことができます。
また、気管の乾燥を防ぎ、ウイルスの繁殖を予防することもできるのです。
もし、あなたが日常的に口呼吸になっているとしたら、免疫機能を高めて病気を予防するためにも、意識して口を閉じて鼻呼吸をするようにしましょう。
さらに、腹式呼吸をやる上でも、必ず気をつけていただきたいことは鼻呼吸をすることなのです。
これから解説する腹式呼吸をやる時にも、鼻呼吸で定期的に行うようにしましょう。
腹式呼吸のメリット
呼吸が浅く、体内への酸素供給量が不足すると、体にはさまざまなトラブルが起きます。とくに慢性的な疲労感がある人は、酸素が不足している可能性があります。
そこで、腹式呼吸を取り入れることで体のトラブルを予防することができます。
腹式呼吸のメリットには、
- 自律神経のバランスを整え、気持ちを落ち着かせる
- 疲労回復
- 免疫力を上げる
といったことが挙げられます。この3つのメリットについて詳しく解説します。
自律神経のバランスを整える
私たちの体のシステムは、興奮したときに活性化する「交感神経」と、リラックス時に活発になる「副交感神経」という2つの自律神経のバランスが整っている上で成り立っています。
しかし、外的刺激やストレスの多い現代の生活では、自律神経はどうしても交感神経が優位に働きやすく、バランスが崩れがちです。
交感神経は興奮系の神経なので、活動時に働くことは良いのですが、過度になると酵素の消費量が増え胃腸の働きが鈍くなってしまうため、免疫力の低下を招くことになります。
こうしたバランスの乱れがちな自律神経を整えてくれるのが「腹式呼吸」です。
腹式呼吸は、交感神経の興奮を抑え、副交感神経を優位にする効果があるからです。
例えば、イライラしたときに腹式呼吸をすると、精神の安定を取り戻すことができます。
これは、腹式呼吸が、別名リラックス神経とも言われている副交感神経を刺激しているからなのです。
つまり、体をリラックスさせたり、ストレスを解消させるといった効果があるのです。
こうして自律神経のバランスが整えられると、体のシステムを正常に働かせることができ、健康維持・増進につながるのです。
疲労回復
腹式呼吸は、酸素をたっぷりと取り込みます。血中の酸素濃度が上がると、体の新陳代謝が活発になるため結果として疲労回復に繋がるのです。
免疫力が上がる
体の免疫システムは、自律神経のバランスが整うことによって機能しています。
前述したように、腹式呼吸は自律神経を整えることができるので、結果的に免疫力を高められるのです。
腹式呼吸のやり方
このように、腹式呼吸には健康に欠かせないメリットがあります。
しかし、実際にやってみると
「うまくいくときと失敗するときがある」
「なんとなく逆効果と思うときがある」
「感覚的に苦しく感じる」
「どうしたら失敗しないか知りたい」
といった、呼吸がうまくいかず、失敗しない方法を知りたい方は多い声は多く聞かれます。
そのため、ここでは正しい腹式呼吸の手順をお教えします。
息を短めに吸う
まず、息を短めに吸います。
吸う時のコツは次の4つです。
・呼吸している感覚がわからないときは手をおなかにおく
・吸うときにおなかをふくらませる
・身に着けている衣類のウエストはゆるめておく
この4つを意識して短く息を吸いましょう。
息を少しずつゆっくり吐く
次に、息を少しずつゆっくり吐きます。
吐く時のコツは2つです。
・おなかを引っ込ませて吐く
この2つを意識してゆっくりと吐いてみましょう。
吸うときと同じように、呼吸している感覚がわからないときは手をおなかにおくとよいです。
ポイント
このように、「短めに吸う」、「ゆっくり吐く」をセットで行うのが腹式呼吸ですが、前述したような効果を上げるためにはポイントが3つあります。
2、空気のきれいなところで行うこと
3、普段から体を締めつけるものは身につけないようにすること
この中でも、体を締めつけるものについては、呼吸の阻害の原因となります。
とくに、女性はブラジャーがきついと肺を圧迫してしまうため、20~30%も呼吸が減ると言われているため、締め付けられていると感じる場合には、締め付けないタイプのものに変えるようにしましょう。
上記3つのポイントをおさえ、腹式呼吸を日々の習慣にすることでその効果が発揮されます。
まとめ
人間の体には、5つの流れがあります。
本記事では、この5つの流れのうち「呼吸」について述べましたが、正しい呼吸法を実践することで呼吸の流れがよくなり、酸素を運ぶ血液の流れを整えられ、体内の自然のリズムと自律神経のバランスを正常化させることができます。
「正しい呼吸法」を実践することは、健康な体をつくるための大事な1つなのです。
また、腹式呼吸は場所も道具も必要としないとても優れた健康法の1つなので、ぜひ日々の生活に取り入れ、習慣にしていきましょう。
【出典】
新谷弘実(2008)「図解 病気にならない生き方」サンマーク出版
新谷弘実(2011)「病気にならない生き方2 実践編」サンマーク出版