私たちは、毎日食事を摂取しています。
その食べものが、胃や腸で消化され吸収されなかった不要なものは、便として排泄されます。
しかし、排便がないと、腸内で便に含まれている水分が再吸収されてしまいます。すると、ますます出にくい硬めの便になってしまう、腸内の悪玉菌が増加しますます腸内環境が悪化してしまう、といった悪循環に陥り、便秘がなかなか解消されない腸内環境になってしまいます。
また、排便の悩みはなかなか人に相談できないこともあります。
そこで、ここでは便秘の解消方法と便通を良くすることにより体調不良も予防することのできる腸のはたらきについて解説します。
そもそも便秘とは?
そもそも、便秘とはどのような状態なのでしょうか。
実は、便秘の定義というものはないのですが日本内科学会では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」としています。
つまり、排便の回数が少ないというだけでなく、不快感や残便感がある、ということも含めて便秘なのです。
通常、食事をしてから24時間後には便として排泄されます。しかし、食物繊維不足や水分不足、動物食の摂りすぎ、ストレスなどがかかると排泄されるまで2日以上かかります。
すると、食物のカス、老廃物、有害ミネラルなどの毒素を腸内で長時間体内にため込むことになります。腸内温度は36.5度なので腐敗が進み、有害ミネラルは大腸で水分が吸収されます。
それが体内に取り込まれることもあり、毒素を吸収してしまうため便秘は良くないのです。
これは、便秘によって腸内に生じた毒素が腸壁から血管へと流れ、出口を求めて体中をめぐり、最終的に皮膚の汗腺から体外へ出ていく際に、皮膚にダメージを与えるからです。
体中をめぐった毒素がダメージを与えるのは皮膚だけではありません。見えないだけで、皮膚に現れたようなダメージは、全身の至る所で生じます。
便秘の期間が長ければなるほど、体に吸収される毒素は多くなります。便秘は腸だけの問題ではないということです。
便秘の原因とは?
では、便秘はどのような原因で起こるのでしょうか。
それは、以下のようなことがあります。
- 食物繊維の少ない食事
- 偏食やダイエットなど、極端に少ない食事量
- 水分摂取不足
- ストレス
- 腸の運動や筋力の低下
- 排便反射の低下
- 消化器系の疾患(大腸がん・クローン病・過敏性腸症候群など)による腸の狭窄(狭くなること)・閉塞(ふさがってしまうこと)や蠕動(ぜんどう)運動の障害など
- 糖尿病・甲状腺機能低下症などの内科系疾患
- 神経系疾患(自律神経失調症・脊椎損傷・パーキンソン病など)による蠕動運動(腸の運動)の麻痺
- 内服薬による副作用
このような、さまざまな要因が関わっている便秘ですが、消化器疾患や内科系疾患などが要因になっている場合は、適切な治療が必要になりますので、自己判断しないで医療機関での相談をお勧めします。
生活習慣や食生活の乱れからくる便秘であれば、自分で改善させることもできますので、それについては解消法を後述します。
食物繊維不足
食物繊維は、大きく分けて、水溶性のものと不溶性のものがあります。
水溶性食物繊維には、ペクチン質、アルギン酸、コンニャクマンナン、コラーゲンなどがあります。
不溶性食物繊維は水分を吸収し、大便のかさを増すので、腸壁を刺激して便通を促進します。
つまり、食物繊維が不足すると便が腸内にため込まれ、便秘になりやすいのです。
水分不足
便を柔らかくするために、水分摂取は欠かせません。こまめに水分を摂っていないと、腸内の便が排泄されにくい状態になってしまいます。
酵素不足による腸内環境悪化
腸の有害なものを排泄するために必要な善玉菌と悪玉菌のバランスを整え、双方の菌がきちんと働ける環境を整えることが大切です。
つまり、酵素が不足すると腸内環境が悪化し、便秘になりやすくなってしまうのです。
新谷弘実医学博士がおすすめする便秘を治す食べ物
排便は、食生活を密接に関係しています。
精製された食べものばかり食べていると、便の元になるかすが少なくなり、便も少ししか作られません。便が少ないのは効率よくからだの栄養として使われているからだと思われるかもしれませんが、そうではないのです。
排便は、体内で作られる解毒された有害物質や有毒物を、体外に排出する重要な働きです。腸の働きを整え、大腸ガン、乳ガン、前立腺ガン、子宮ガン、卵巣ガン、肺ガンなどの予防や、皮膚をきれいに保つことにも役立っています。
つまり、便通を良くすることにより体調不良も予防することができるのです。
食物繊維を摂る
食物繊維の効果は、胃・腸の流れをよくすること、便通を良くし便秘を解消または予防することです。
食物繊維は種類も性質もさまざまで、いろいろな食品の中に含まれていますが、特に植物性食品の中の野菜、果物、豆類、精製されていない穀物、副穀物、きのこ類、そして海藻類に多く含まれています。
食物繊維の不足から起こる病気として、便秘、肥満、ガン、糖尿病、脂肪肝、大腸憩室症、動脈硬化、胆石症、高血圧、老化現象など、実にいろいろあります。
これだけをみても、食物繊維がいかに私たちの健康に役立つか、ということがよく分かります。
今、女性の3人に1人、男性の6人に1人が、体重減量のためのダイエットをしていると言われています。食物繊維はダイエット効果の点でも、食欲を抑えたり、満腹感を与えたり、その上、カロリーがほとんどないということ、また糖分や脂肪の腸内からの吸収を遅くしたり制限したりすることからも、重要です。
海藻類が一番おすすめ
主な食物繊維の多い食品と、その含有量は以下の通りです。
・きくらげ・・・約75%
・ヒジキ・・・約55%
・ワカメ、青ノリ・・・約40%
・ノリ、コンブ・・・約30%
このように、海藻類の含有量は、いちばん高い数値を示しています。
海藻類の乾燥された重量の50~60%は、食物繊維です。
水に溶けず、消化もされない食物繊維は腸内の水分を吸収して膨らみ、便の量を増すことによって腸壁を刺激し、ぜん動運動活発にします。その結果、便通をよくし、大腸内の有毒物などが腸内に長く留まることを防ぎます。
ヒジキやワカメ、コンブなどは、特にいろいろな病気の回復を促すという働きが知られています。
水分では水をたくさん飲む
胃腸をはじめ、からだの中の細胞には常に新鮮な水が必要です。
腸の場合、良いきれいな水を飲んでいないと、腸の粘膜が乾いたようになってベターっとくっついているか、便のうすいかたまりが腸壁にべったりくっついていたりします。
つまり、水は、皮膚のみずみずしさだけではなく、胃腸のみずみずしさを保ち、きれいな胃腸をつくるのにとても大切なのです。
水を飲むことで体内酵素や腸内細菌を活性化させることができます。
また、起きがけに水を飲むことで睡眠中に体から出てしまった水分を補うとともに、腸に程よい刺激を与えることができます。
活きた酵素を多く含んだ食べ物を摂る
新谷酵素を監修した新谷弘実博士によると、基本的には酵素を多く含む食物が、よい食物とのことです。
もっともよいのは、ミネラルをたくさん含んだ肥えた土地で、化学肥料や農薬を使わずに育てられたものを、収穫してすぐに食べることです。野菜でも果物でも肉でも魚でも、新鮮であるほど酵素の量は多いといっても間違いありません。
私たちが食べたときに「おいしい」と感じる、酵素がいっぱい詰まった新鮮なものを生で食べることで、腸内環境を整えることができます。
発酵食品を多く摂る
私たちの体内で、腸内細菌がたくさんの酵素をつくってくれているように、発酵食品に含まれる微生物も、発酵の過程で多くの酵素を生み出しています。
そうした酵素を豊富に含む発酵食品は、まさに「生きた食べもの」であり、腸内環境を整えるためにも必要です。
まとめ
便秘は腸内環境を悪化させます。逆に言うと、健康によい循環を支えるのは腸内環境なので、私たちにできることは食事や生活習慣に気を配り腸内環境を整えることです。
抗酸化酵素をもつ善玉菌が繁殖しやすい腸内環境を用意するということが、人間にできる唯一の酵素を増やす方法です。それは、酵素の豊富な食物を食べることで、善玉菌を繁殖させ、潜在酵素を作り出す原料となるからです。
未精製の穀物、豆類、野菜類、海藻類、根菜類など、あくまでも自然のままの食べものを取り、自然のバランスで入っている食物繊維を摂取することによって、十分な食物繊維を摂取し、基本的な食べものの習慣を変えることも大切です。
【出典】
新谷弘実(2008)「図解 病気にならない生き方」サンマーク出版
新谷弘実(2008)「胃腸は語る」弘文堂
新谷弘実(2005)「病気にならない生き方」サンマーク出版